ポイント!
副鼻腔炎、鼻炎、上気道炎、気管支炎などの感染疾患を治療する上で鼻水を吸引しても、治りを早くしたり、その他の疾患の併発を予防できる医学的かつ明確な根拠はありません。=鼻水を吸引しても一時的に症状が改善されるだけです。 ・夜間、お子さんが鼻水が多くて苦しそうな時は、その時の鼻の症状を一時的に改善するという意味で、鼻の洗浄、鼻の吸引をしてあげると良いでしょう。 乳幼児の鼻炎、副鼻腔炎において、鼻水を吸引することは、その病気を治す上で医学的に必要なのかどうかを解説します。
鼻水はなぜ出るの?
鼻水はそもそも何で出てくるのでしょうか? 鼻は空気を吸い込んだり、においを感知する機能を持っています。これらの機能を果たすために、吸い込む空気の湿度や温度を調節したり、外界からの異物の侵入を防ぐ機能が必要になります。これが鼻水の機能なのです。 具体的に例を挙げて鼻水が出る状況を解説します。
①温度、湿度を調節する
熱いラーメンを食べたり、熱いお茶を飲んだりすると、鼻水が出ることってありますよね。これは、熱い空気(湯気)を吸い込むと鼻がそれを感知して、鼻水を出します。熱い空気がそのまま気道、肺に入ってしまうと空気の交換をする大事な臓器がやられてしまうからです。熱い空気を冷ますために鼻水が出るのです。逆に、冷たい空気が入ってくると鼻がそれを感知して、鼻水を出し、湿度を高くし体温に近い温度にしようとします。
②外界からの異物を外に出そうとする
こしょうなどの刺激が強い香辛料をたくさんふるとくしゃみが出ますよね。あれは、鼻が香辛料を異物と感じ取って、刺激が入り込むのを防いでいるのです。風邪や花粉症の時には、体に侵入したウイルスや花粉を追い出そうとして鼻水を出しています。くしゃみやせきも同様に、ウイルスを追い出そうと体が戦っているのです。これらは、ウイルスから体を守る、あるいは花粉を体の外に出そうとする体の防御反応なのです。
風邪や感染症の場合は、鼻の粘膜が赤くなります。炎症を起こしている状態ですので、鼻を温めすぎたり、鼻をかみすぎたり、吸引を繰り返して粘膜に強い刺激を与えるのはよくありません。 アレルギー性鼻炎の場合は、粘膜が真っ白になっている場合もあります。血液の循環が悪くなっているため、体温と同じくらいの温かい蒸気を吸入したり、蒸しタオルで鼻をおおって、ゆっくり呼吸しながら鼻を温めてあげると、鼻づまりや鼻水が改善されることもあります。
鼻の吸引は意味がない?
以上のことから鼻水というのは、体を守る反応の一つなのです。 薬を使って鼻水を止めてしまったり、過度に吸引して取り除いたり、鼻の粘膜を傷つけてしまうことは、かえって症状を悪化させることもあるのです。毎日毎日、耳鼻科に通って吸引をするというのは、医学的な根拠はなく、ただお子さんの病院に対する恐怖心を強くしてしまう可能性もあります。
急性副鼻腔炎の治療ガイドラインでも「鼻吸引」は「医学的な根拠は乏しいが経験的に推奨する」ということになっています。この記載をかみ砕くと、「効果があるというしっかりした根拠はないけれど、今までずっとやってきている治療だからやってもいいでしょう」ということになります。つまり、効果があるかわからない意味のない治療という解釈もできます。 ただ、小さいお子さんで問題となるのは、あまりに鼻水が多くて眠れない、ミルクが飲めない場合です。このような場合には、一時的に症状を改善し、ミルクを飲みやすくしたり、体力の回復を助けるために睡眠を良くとってもらえるように適度に吸引してあげることもよいでしょう。
具体的に乳幼児では、市販の「ママ鼻水トッテ」や「はな吸い器」などを用いることもよいでしょう。 気をつけて欲しいことは、鼻水が詰まっている状態の時です。鼻づまりというのは、一つは、粘膜が炎症を起こして腫れ、空気の通り道を狭めてしまう状態と、もう一つは、鼻水などの分泌液が鼻の奥に溜まって固まってしまっている状態の二通りあります。 粘膜が腫れている状態のときは、粘膜が炎症を起こしうっ血しているため、それを改善してあげる吸入などで良くなることもあります。
鼻水などの分泌物が固まってしまっている状態のときは、家で蒸気を鼻から吸って鼻から吐く、つまり鼻呼吸をしていただくと、固まった分泌物が柔らかくなります。その柔らかくなった状態で、吸引をしてあげると良いかもしれません。特にお風呂に入っているとき、直後などは分泌物が柔らかくなっているので、鼻がかみやすく吸引もしやすいでしょう。ただし、過度の吸引は症状を悪化させる可能性もありますので、注意してください。
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