食中毒の原因について。ご家庭での予防方法も解説

食中毒って何?

食中毒とは?

食中毒は、食べ物や飲み物などに含まれていた有害または有毒な物質を摂取することにより、腸などの消化器の症状(下痢、嘔吐、腹痛、発熱など)を中心として発症する病気のことをいいます。原因物質が直接的に毒物として作用する場合と、細菌やウイルスなどの微生物が増殖して腸などの消化管の感染症として発症する場合の2つに分けられます。

食中毒の種類

食中毒の原因となった因子・物質によって、

  • 細菌性食中毒(O-157などの腸管出血性大腸菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター、サルモネラなど)
  • ウイルス性食中毒(ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスなど)
  • 化学性食中毒(鮮度の落ちた魚(マグロ、カジキ、サバなど)、発酵食品(チーズなど)、腐敗した食品に含まれるヒスタミンやアミン)
  • 自然毒食中毒(フグやキノコの毒)

に分けることができます。

梅雨の高温多湿な時期から夏場にかけて多く発生するのが、細菌性食中毒です。また、冬場はカキなどから発生するノロウイルスによる食中毒も多くなります。細菌性食中毒とウイルス性食中毒が食中毒の原因の大部分を占めています。

食中毒を起こす細菌やウイルス

続いて、どのような種類の細菌やウイルスが食中毒を起こし、どのように感染し症状が出るのかをご説明します。食中毒は、それぞれの原因となる細菌、ウイルスや毒素によって摂取してから症状が出るまでの時間や症状の種類や程度が異なります。ここでは、代表的な原因による食中毒の感染経路、潜伏期間、主な症状を説明します。

①黄色ブドウ球菌

食品の中で黄色ブドウ球菌が増殖する過程でつくったエンテロトキシン(腸管毒素)を摂食することで食中毒が発生します。黄色ブドウ球菌は増殖力が強く、ほとんどの食品で食中毒が発生していまいます。

感染経路 手の指(特に切り傷や化膿した傷)、糞便、鼻水、およびこれらに汚染された食品が感染源となります。
潜伏期間 潜伏期間は短く、通常1〜5時間(平均3時間)と言われています。
主な症状 吐き気、嘔吐、下痢が多く、発熱は稀です。大体、2〜3日で全快します。
治療方法 抗菌薬などは効果がなく、水分摂取を中心とした対症療法になります。食中毒性の下痢に対する治療は共通で、下痢を止めてしまうと逆に毒素や細菌が排出されず、症状の回復が悪くなると言われています。

​②病原性大腸菌

感染経路 O-157などの腸管出血性大腸菌は、稀に食中毒の原因となりますが、牛などの草食動物(山羊、鹿、豚なども含む)が保菌しています。これらの動物の糞便に汚染された食肉や野菜が感染源となります。腸管出血性大腸菌以外の病原大腸菌は、頻度は異なりますが、ヒト、動物、河川および種々の食品(特に生肉)などから検出されます。
潜伏期間 O-157などの腸管出血性大腸菌は3〜9日と長く、他の病原大腸菌の場合は、5〜72時間と言われています。
主な症状 O-157などの腸管出血性大腸菌の臨床症状は他の病原大腸菌に比べて大変重篤です。O-157の場合は腹痛がかなり強く、水様性下痢、ときに出血性下痢や吐き気、嘔吐を伴います。最悪の場合、合併症として、溶血性尿毒症や脳症で死亡するケースもあります。
治療方法 口からの水分や食事の摂取ができず、脱水が進んでしまっている場合には、点滴などを行うことがあります。重篤ではない場合には、適切な水分を適切な方法で口から摂取することが大事なポイントです。

抗生物質の使用に関しては、賛否両論あります。使用するとその後の合併症の頻度が減るという報告と、逆に増加するという報告も存在しますので、その情報をもとに患者さまと相談しながら抗生物質の使用を検討していきます。食中毒性の下痢に対する治療は共通で、腸管の運動を阻害する薬剤や下痢を止める薬剤は腸管の中での菌の増殖を助長し、症状の回復を妨げる傾向にあるため使用しません。

適切な水分摂取が基本となります。

③サルモネラ菌

感染経路 食肉、卵とその調理食品によるものも多く報告されています。調理者の手指や調理器具・機材を介して加熱食品への二次汚染も発生しています。
潜伏期間 6〜48時間と幅があります。
主な症状 悪寒、嘔吐に始まり、腹痛、下痢が起こります。発熱は38°C前後のことが多く、重症例では血便も見られます。5日ほどで改善しますが重症に至ることも多い感染症です。
治療方法 抗生剤の使用は推奨されておらず、逆に症状の回復を遅くしたり、抗菌薬関連下痢症や細菌の抗生剤に対する耐性化(抗生剤が効かなくなる)といった問題もあり、抗生剤は使用しません。ただし、血液中に菌が入り込んだり、腸以外に病巣(骨、中枢神経)に菌が移行してしまっている場合には抗生剤を使用します。

食中毒性の下痢に対する治療は共通で、腸管の運動を阻害する薬剤や下痢を止める薬剤は腸管の中での菌の増殖を助長し、症状の回復を妨げる傾向にあるため使用しません。適切な水分摂取が治療の基本となります。

④カンピロバクター

感染経路 家畜に広く分布し、解体時に腸管から肉を汚染します。鶏肉の汚染による食中毒が多く発生しています。野鳥の糞便により汚染された井戸水や湧き水で、大型食中毒が発生したという報告もあります。
潜伏期間 潜伏時間は2〜7日とやや長めです。
主な症状 吐き気、腹痛、下痢が主症状です。発熱は38°C前後が多く、1週間以内で完治する例がほとんどです。死亡例はほとんどありません。
治療方法 自然治癒する傾向の強い感染症で、ほとんどの場合には脱水を予防する水分摂取のみで軽快します。抗菌薬は血液中に菌が入り込んだり、免疫に異常がある患者、発熱が持続する場合、下痢が遷延したり、血便を伴う場合に限定されますが、効果ははっきりしていません。マクロライド系の抗生剤を使用する場合が多いです。

食中毒性の下痢に対する治療は共通で、腸管の運動を阻害する薬剤や下痢を止める薬剤は腸管の中での菌の増殖を助長し、症状の回復を妨げる傾向にあるため使用しません。適切な水分摂取が治療の基本となります。​

⑤腸炎ビブリオ

感染経路 主に魚介類やその調理食品から感染します。この菌は増殖に2〜3%の塩が必要になるため、漬け物などの塩分を含んだ食品で大量増殖する傾向にあります。例えば魚を調理したまな板や包丁を洗わずに漬け物を切ると、その漬け物が汚染され食中毒が発生する場合もあります。7〜9月に集中して発生します。
潜伏期間 5〜40時間と言われていますが、10時間以上の例が多いようです。
主な症状 一般に潜伏期間が短いほど重篤な症状を示す傾向があります。激しい下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、37〜38°Cの発熱を伴い、2〜3日で快復に向かいます。
治療方法 食中毒性の下痢に対する治療は共通で、腸管の運動を阻害する薬剤や下痢を止める薬剤は腸管の中での菌の増殖を助長し、症状の回復を妨げる傾向にあるため使用しません。適切な水分摂取が治療の基本となります。

 

⑥ノロウイルス

感染経路 ノロウイルスに汚染された食品、特にカキを含む二枚貝が感染源となり、冬期に発生することが多いとされています。二枚貝の生息域がノロウイルスに汚染されると、それらがノロウイルスを体内に蓄積すると考えられています。
潜伏期間 24時間から48時間とされてます。
主な症状 下痢、吐き気、腹痛、発熱(38°C以下)が出現し、通常3日以内で回復します。
治療方法 食中毒性の下痢に対する治療は共通で、腸管の運動を阻害する薬剤や下痢を止める薬剤は腸管の中での菌の増殖を助長し、症状の回復を妨げる傾向にあるため使用しません。適切な水分摂取が治療の基本となります。

食中毒の予防

食中毒はよくニュースで取り上げられるため、飲食店での食事が原因と思われがちですが、毎日食べている家庭の食事でも発生しているということを覚えておきましょう。普段、当たり前にしていることが、思わぬ食中毒を引き起こすことがあります。

家庭で発生する食中毒は、家族内でしか発生しないため、発症する人が少なく、食中毒と認識されずに、風邪や寝冷えなどと思われがちです。そのため、食中毒とは気づかれず、重症化することも稀にあります。家庭においても以下に挙げる3つのことをしっかりと注意し、普段の生活から予防することが大切です。

  • 細菌をつけない。
  • 手指、調理器具などを丁寧に洗う(除菌)。
  • 細菌を増やさない。
  • 早く調理し、早めに食べる。
  • 食品の保存は冷蔵庫で。ただし冷蔵庫の過信は禁物。
  • 細菌を殺す
  • 多くの菌は高温で死滅。調理の時、加熱は中心まで充分に。

上記のことを守ることで食中毒の発生頻度はかなり減少します。また、厚生労働省のホームページにも食中毒に関するさまざまな情報が掲載されていますので、普段からそのような情報を集め、食中毒を予防していきましょう。​

食中毒を防ぐ6つのポイント

厚生労働省が推奨している食中毒を防ぐ6つポイントをご紹介します。

ポイント1 食品の購入

肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。表示のある食品は、消費期限などを確認し、購入しましょう。購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。

​生鮮食品など温度管理(冷蔵、冷凍)を必要とする食品を購入される際は、できるだけ買い物の最後にしていただき、購入したら寄り道せずにまっすぐ持ち帰るようにしましょう。​

ポイント2 家庭での保存

冷蔵または冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。目安は、7割程度です。

​冷蔵庫は10°C以下、冷凍庫は、-15°C以下に維持することが目安です。温度計を使って温度を計ると、より庫内温度の管理が正確になります。細菌の多くは10°Cでは増殖がゆっくりとなり、-15°Cでは増殖が停止していますが、死ぬわけではありませんので、早めに使いきるようにしましょう。

​肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁などがかからないようにしましょう。肉、魚、卵などを取り扱う際は、前後で必ず手指を洗いましょう。せっけんで洗った後、流水で十分に流すことが大切です。手洗いはとても簡単なことですが、細菌汚染を防ぐ良い方法です。

​食品を流し台の下に保存する場合は、水漏れなどに注意しましょう。また、直接床に置いたりしてはいけません。

​ポイント3 下準備

ご自宅の台所を見渡して、以下の点をもう一度チェックをしましょう。

  • ゴミは捨ててありますか?
  • タオルやふきんは清潔なものと交換してありますか?
  • せっけんは用意してありますか?
  • 調理台の上は片付けて広く使えるようになっていますか?

​井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。手を洗いましょう。

​生の肉、魚、卵を取り扱った後には手を洗いましょう。途中で動物に触ったり、トイレに行ったり、おむつを交換したり、鼻をかんだりした後の手洗いも大切です。

肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。

​生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってからさらに熱湯をかけた上で使うことが大切です。包丁やまな板は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて、使い分けるとさらに安全です。

​ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗いましょう。

​冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのはやめましょう。室温で解凍すると食中毒菌が増える場合がありますので、解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行いましょう。また、水を使って解凍する場合には、気密性の高い容器に入れ、流水を使います。

​料理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。解凍した食品をやっぱり使わないからといって、冷凍や解凍を繰り返すのは危険です。冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖する場合もあります。

​包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに、洗剤と流水で良く洗いましょう。ふきんのよごれがひどい時には、清潔なものと交換しましょう。漂白剤に1晩つけ込むと消毒効果があります。包丁、食器、まな板などは、洗った後、熱湯をかけたりすると消毒効果があります。たわしやスポンジは、煮沸すればなお良いです。

​ポイント4 調理のとき

調理を始める前にもう一度、台所を見渡してみましょう。下準備で台所がよごれていませんか?タオルやふきんは乾いて清潔なものと交換し、手を洗いましょう。

​加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。加熱を十分に行うことで、もし食中毒菌がいたとしても殺すことができます。目安は、中心部の温度が75°Cで1分間以上加熱することです。

​料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品に付いたり、増えたりします。途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れましょう。そして再び調理をするときは、十分に加熱しましょう。

​電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器やふたを使い、調理時間に気を付け、熱の伝わりにくい物は、時々かき混ぜることも必要です。

​ポイント5 食事

食卓に付く前に手を洗いましょう。清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけましょう。

温かく食べる料理は常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくしておきましょう。目安は、温かい料理は65°C以上、冷やして食べる料理は10°C以下です。

調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。例えば、O-157は室温でも15〜20分で2倍に増えます。

​ポイント6 残った食品

残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。

残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。75°C以上が目安です。味噌汁やスープなどは沸騰するまで加熱しましょう。ちょっとでも怪しいと思ったら、口に入れるのはやめて食べずに捨てましょう。

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