​ウイルス性胃腸炎の治療は脱水予防が基本

ポイント!

どんな種類のウイルス性胃腸炎でも治療法は変わらない

  • 原因ウイルスを特定する必要はある?
    →ウイルス性胃腸炎はお腹の風邪とよく表現されます。原因となるウイルスは様々ですが、どのようなウイルス性胃腸炎でも治療法は同じです。
    →何のウイルスに感染したかを特定することは、治療方法を決めたり、登園登校を許可する上で全く必要ありません。
  • ウイルス性胃腸炎に特効薬はありません。
  • 脱水にならないように適切な種類と量の水分補給をして、自分の免疫力で治すしか方法はありません。

ウイルス胃腸炎の原因

冬の胃腸炎はウイルス性が多い

感染性胃腸炎には「細菌性」と「ウイルス性」があり、冬に流行する胃腸炎はほとんどがウイルス性です。胃腸炎を起こすウイルスはたくさんありますが、小さなお子さんでは

  • ロタウイルス
  • アデノウイルス

による胃腸炎が多く、他に

  • 札幌ウイルス
  • ノロウイルス
  • アストロウイルス

などによるものがあります。
ウイルスによる胃腸炎ではウイルスの種類によって多少の経過は違ってきますが、基本的に特効薬はなく、脱水を予防したり、対症療法で体力の低下を防いだり、体力の回復を助ける治療を行うしかないのです。

治療方法は基本的に同じ

よく診察の際に「これは、ノロウイルスですか?ロタウイルスですか?何のウイルスですか?」とご質問いただきます。症状の経過や、便の性状、罹患している方の年齢などから、ある程度は推測ができます。また、ウイルスを分離したり、迅速検査をして特定することが可能なウイルスもあります。

しかし、原因ウイルスを特定したからと言って治療法や観察すべき症状は変わらないため、質問に対してのお答えは、

「ノロウイルスでもロタウイルスでも治療法は変わりません。ウイルスを特定する必要はありませんので、脱水がないか、その他に重症な症状がないかをしっかりと観察してください。そして、今後脱水が進んでいかない様にうまく水分摂取をさせてください。」

となります。

ウイルスを特定する必要はない

「保育園から何ウイルスなのかを診断してもらってくださいと言われたんです」とご相談を受けることもあります。ウイルスを特定してもその後の対処方法は変わりませんので、保育園の先生には「ウイルスを特定しなくてはいけない理由は何ですか?」と質問してみるといいでしょう。

そして、
「病院ではウイルスを特定する意味はなく、特定できるウイルスも限られていると説明を受けました」
と答えましょう。
保育園の先生方は周りのお子さんにうつるかどうかが心配なのだと思いますが、どんなウイルスでも、感染性があります。胃腸炎を引き起こすどんなウイルスであっても、しっかりとした感染対策を行うことでそれは予防できることなのです。
なお、学校等の出席停止をともなう学校感染症の疑いのある場合には、検査の有無に関わらず症状等から医師がその診断をしますので、安心してください。

胃腸炎症状があった場合には、ウイルスの種類が問題なのではなく、その方と周りの方々に対し正しい感染対策を行うことが必要なのです。「何のウイルスなのか保育園から聞いて来るように言われた」などと言った不必要な医療機関受診はこどもたちの負担となります。保護者の皆さん、そしてこどもたちにかかわる保育園、幼稚園、学校の先生方、皆さんが正しい知識を持ってこどもたちの健康を守ることが大切なのです。​

症状と治療法について

​脱水の症状はないか

ウイルス性胃腸炎は2歳以下の小さいお子さんがかかりやすく、通常11月から3月にかけて流行します。嘔吐・下痢が主症状で、症状が強いと脱水や電解質(ナトリウムやカリウム)の喪失症状、全身症状が現れます。

脱水症状になると、体の血液量が減り、循環不全(顔色が悪い、手足が冷たいなど)を起こします。脱水があるかどうかを判断するポイントを以下に挙げますので、それぞれを観察し、問診時や診察時に医師に伝えてください。

  • 1日に何回下痢をしているか。
  • 下痢の量はどのくらいか。
  • 1日に何回嘔吐しているか。
  • 水分はどのくらい取れているか。(半日でペットボトル半分、1時間でコップ一杯など)
  • 尿は何回出ているか。

これらの情報と診察所見をもとに脱水の程度を判断します。また、体の中のどれだけの水分が失われているかは、体重を測ることでわかるのですが、胃腸炎になる前の体重と比較することが必要ですので、日頃から体重をこまめに測っておくとよいでしょう。

治療の基本は脱水予防

ウイルス性胃腸炎の治療の基本は、脱水の予防です。

胃腸炎のウイルスに対する特効薬は現在の医学では存在しませんので、自分の免疫力で治っていくのをサポートしてあげるのが基本となります。特に、脱水は危険な状態となることがありますので、そうならないように予防する治療が必要です。

脱水の予防方法は、体液に近い水分を口からこまめに摂取することです。​嘔吐した直後は、すぐに水分や固形ものは与えず、口をゆすぐ程度がいいでしょう。その後、1〜2時間後からゆっくりと水分摂取を始めてください。3〜4時間はあわてずにゆっくりと摂取することを心がけましょう。

最初は、ティースプーン1杯(約5ml)から始め、これを10〜15分おきに飲ませてください。嘔吐、下痢のときは腸の動きが悪く、吸収が悪い状態になっています。急にたくさん飲ませてしまうと更に腸の動きが悪くなり、症状を悪化させてしまう場合があります。

なので、根気強く少量ずつ与えてください。1時間くらい続けて、症状の悪化がないことを確認できたら、少しずつ1回量を増やしてください。増やす場合も一気に増やさず、徐々に時間をかけて増やしていきましょう。

ご説明したような水分摂取を行ってもうまく水分が取れなかったり、摂取する水分以上に嘔吐・下痢が多く脱水が進んでしまうときは、点滴が必要となります。場合によっては、吐き気止めの坐薬や点滴を行うこともありますが、これらの吐き気止めは、過剰に使うと小さなお子さんの運動機能に対する副作用が出る場合もあり注意が必要です。

よくあるウイルス性胃腸炎

次に、頻度が高く、よく流行する胃腸炎について解説します。

①ロタウイルス胃腸炎

ロタウイルスは冬場の乳幼児、学童の胃腸炎の最も多い胃腸炎の原因の1つです。特に生後6か月〜2歳までに多く、胃腸炎症状が重症化しやすいウイルスです。

ロタウイルスの中にもいくつか種類があり、ヒトに感染することがわかっているのはA、B、C群の3つで、一般にロタウイルスといえばA群を指します。B群は以前に中国で流行しましたが日本ではみられません。C群ロタウイルスによる胃腸炎は主に3歳以上の年長児や成人にみられ、A群のような大規模な流行は殆どありません。

赤ちゃん(乳幼児)の初感染は重症化する危険性がありますが、再感染も多く、年齢が上がるにつれ症状は軽くなります。

症状 1週間程度続く白色の下痢です。病初期に嘔吐、発熱を伴うこともあります。白色で酸っぱい匂いのする大量の下痢が特徴で、嘔吐・下痢による脱水が最も大きな合併症です。その他、痙攣、脳症、腎不全、腸重積などの合併症もありますので注意が必要です。
診断 症状と便中のウイルスの検出で確定診断ができますが、特殊な検査ですので時間がかかります。また、免疫学的検査法にて10分程度で迅速検査が可能ですが、ロタウイルス感染であることを証明したところで、治療法が変わるわけではありませんので、臨床症状からある程度診断するので十分でしょう。
治療 ウイルス感染によるものですので、特効薬はありません。脱水予防、脱水に対する治療が基本となります。

②ノロウイルス胃腸炎

1968年にアメリカの小学校で集団発生した際に検出されたウイルスであり、小形球形ウイルスの1つで2002年に遺伝子が解明され、ノロウイルスと名付けられました。汚染された食物(生カキ、サラダが多い)、飲料水などを介して感染し(糞口感染)、学童、成人、老人施設に集団発生することがあります。冬季を中心に流行し、潜伏期間(感染から発症までの時間)は24〜48時間です。

症状 主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1〜2日続き後遺症なく軽快します。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
大抵は軽症で3〜4日の経過で改善しますが、脱水に対する手当てが遅れると重篤な結果をもたらすことがありますので注意が必要です。また、発症後1週間は糞便や吐物中にウイルスを排出し、感染源となります。
診断 便中のウイルスの遺伝子検査、電子顕微鏡検査が主流でしたが、最近になって迅速検査のキットが発売され、15分程度で検査ができるようになっています。しかし、ノロウイルス感染であることを検査し証明したとしても、治療法が変わるわけではありませんので、ロタウイルスをはじめとしたウイルス性胃腸炎の診断と同様に、臨床症状からある程度診断するので十分でしょう。
治療 ウイルス感染によるものですので、ウイルスに対する特効薬はありません。脱水予防、脱水に対する治療が基本となります。

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