クループ症候群について

ポイント!

  • のどの奥(喉頭)が狭くなり、空気が十分に吸い込めなくなったり、特有の咳が出たりする病気の総称です。
  • 犬の吠える声(オットセイの鳴き声)のような咳が出たり、息を吸うのが苦しくなり、ひどくなると、ヒューヒューして、喉の付け根や胸をへこませる呼吸(陥没呼吸)になります。
  • 原因は、風邪のウイルスによる喉頭気管気管支炎がほとんどですが、まれに細菌性の喉頭蓋炎があり重症になることがあります。異物やアレルギー反応による閉塞もあります。
  • 突然呼吸の状態が悪くなることがありますので、注意してお子様の状態をみるようにしましょう。

クループ症候群とは

クループ症候群とは、感染やアレルギー反応による急激な炎症や腫脹、異物などにより、上気道が狭くなって、特徴的な咳、かすれ声、吸気性喘鳴などの症状をきたす疾患の総称です。​

上気道の狭窄をきたす主な原因には以下のような病態が知られています。

  • パラインフルエンザウイルスなどによる喉頭気管気管支炎
  • 高熱と重篤な呼吸困難を伴い、急激な経過をとるインフルエンザ桿菌などの細菌による急性喉頭蓋炎
  • 異物や腫瘍などによる物理的な上気道閉塞
  • アレルギー反応による声門周囲の浮腫​

以下に、上記4つの病態と治療法、自宅での対処法などについてご説明します。

①喉頭気管気管支炎

喉頭気管気管支炎の症状

一般的に、クループと呼ばれてお子さんに最も頻度が多いのは、この喉頭気管気管支炎です。いわゆる“風邪”ウイルスの感染によって起こるものです。

多くは6か月〜4歳、とくに1〜2歳ぐらいのお子さんにみられ、”犬の吠えるような”と例えられる特徴的な咳がみられます。小児の喉、特に声門の直下はもともと大人より狭いため、この部分が炎症を起こし喉が腫れてしまうと容易に症状が出現します。風邪の症状から始まり、多くの場合、夜間突然に”犬の吠える声のような”、もしくは”オットセイの鳴くような”咳がでたり、息を吸うときに「ヒューヒュー」「ゼロゼロ」という音(これを吸気性喘鳴といいます)がしたりします。泣くときにも、いつものように泣き声が出ず、鋭く「ヒーヒー」とか低音の「ゼロゼロ」という音がすることもあります。

ひどくなると、息を吸うときに、左右の鎖骨の真ん中や肋骨と肋骨の間がペコンペコンと凹む、苦しそうな呼吸(陥没呼吸)をするようになります。​

喉頭気管気管支炎の治療

喉頭の腫れを和らげるボスミンという薬の吸入をします。効果の持続は短時間であるため、呼吸の状態によっては、より持続的な効果を期待してステロイド(デカロドン、リンデロン)の内服を行います。

原因はウイルスなので抗菌薬は不要(無効)です。通常、2、3日の経過で軽快していきます。呼吸困難の症状が強いときには、入院治療を行うことがあります。

ご家庭でのケア

喉頭気管気管支炎は自宅でケアできることがたくさんあります。軽症例では加湿だけで症状が改善することがありますので、加湿器や洗濯物などで充分な加湿をしてください。大泣きをきっかけに症状が悪化することもありますので、安静を保つように心がけて下さい。

喉頭は咳刺激に対して敏感なところなので、ちょっとした刺激で咳き込んでしまいます。刺激にならないように冷たい空気や、臭いの強い空気を避けましょう。

寝かせるときは、肩枕(頭ではなく、肩の辺りに枕かタオルを敷く)をして、少し顎を挙げた姿勢にすると、楽になることがあります。

こんな時は要注意!

喉頭気管気管支炎は、日中には改善傾向となりますが、夜になると再度悪化するという特徴があります。以下の場合は、緊急を要する可能性があるのですぐに医療機関を受診しましょう。

  • 息を吸うときに喉の付け根や胸をへこませる呼吸(陥没呼吸)をしている
  • 顔色や唇の色が悪い
  • 水を飲み込めず、よだれが出ている
  • 息苦しくて横になっていることが出来ず、起き上がってしまう

②急性喉頭蓋炎

急性喉頭蓋炎の症状

急性喉頭蓋炎とは、のどの奥にある蓋状の構造である喉頭蓋に炎症が起こり、急性の経過で致命的な窒息をきたす非常に重大な病気です。突然の発熱、激しい咽頭痛、吸気性喘鳴で発症し、急速に症状が増強します。

2〜7歳が好発年齢で、原因の大半はb型インフルエンザ桿菌(Hib)という細菌です。近年Hibワクチンが定期接種となり、有病率は大幅に減少していますが、命に関わる重大な病気であり、その特徴を理解しておくことはとても大切です。

急性喉頭蓋炎では、喉頭気管気管支炎で認めるような特徴的な咳がみられることは少なく、先に述べた、突然の発熱、咽頭痛、吸気性喘鳴に加え、よだれを垂らし、前かがみで下あごを前に突き出すような姿勢をとることが特徴です。​

急性喉頭蓋炎の治療

泣くことで喉頭蓋の腫脹がさらにひどくなるのを防ぐため、こどもの不安感や恐怖感をできるだけ排除します。血液検査や点滴などの痛い検査は後回しにして、すぐさま口か鼻から気管に管を入れて空気の通り道を確保します。

原因となっている細菌に対して抗生物質の投与を行います。

急性喉頭蓋炎を疑ったら

急性喉頭蓋炎は、急激に進行して窒息をきたす、非常に重大な病気です。すぐに救急車を呼び、上気道を刺激しないよう、泣かさないように安静を保ちつつ、到着を待ちます。

窒息により意識を失ってしまったら、下の顎を上に挙げて空気の通り道を確保しながら人工呼吸、および心臓マッサージを行います。空気の通り道が確保できない場合には心臓マッサージだけでも継続します。

③異物や腫瘍による物理的な上気道の閉塞

食べ物やおもちゃをのどに詰まらせることにより上気道狭窄をきたすこともあります。

お子さんの口に入るサイズのおもちゃは手の届かないところに片付けておくよう日頃から注意しましょう。のどに詰まらせる可能性のある大きな食べ物は小さく切り分けてから与えるようにしましょう。

もし、異物がのどに詰まってしまったら、肩甲骨の間の背中を手のひらで強く叩く背部叩打法、後ろから腹部に両手を回し、握りこぶしで手前上方に向かって突き上げる腹部突き上げ法を行い、異物除去を試みます。

意識を失ってしまったら、救急要請とともに心肺蘇生を行います。

④アレルギー反応による声門周囲の浮腫

ウイルスや細菌、異物が関与しない上気道狭窄も存在し、痙性クループと呼ばれます。アレルギー反応による声門下の浮腫が原因と言われています。

夜間突然息が苦しくなって目を覚まし、犬が吠えるような声の咳や、吸気性の喘鳴が出現しますが、先行する感冒症状や発熱は見られないことが多く、短時間ですぐに症状が消失するものの、同日内に、または数日間繰り返すことが特徴です。症状が強ければ、①喉頭気管気管支炎と同様の治療を行うことがあります。

上気道の狭窄は、時に命に関わることのある病態です。病気のことをよく理解し、どんな症状が出たら要注意なのか知っておくことはとても大切です。お子さんの呼吸の状態を注意深く見守りましょう。

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