ワクチンを同時接種しても大丈夫?
保護者の皆さんから、「複数のワクチンを同時に接種すると、どんな問題がありますか?」というご質問をよくいただきます。答えは、「全く問題ありません」です。海外ではむしろ同時接種が一般的で、ワクチンの有効性や副反応について、同時接種と単独接種で有害事象に差はなく、安全性に関して、同時接種は、単独接種と同じであるという研究結果が得られています。また、日本小児科学会でも同時接種を推奨しています。
ワクチン同時接種の安全性については、日本小児科学会が次のように意見をまとめています。
- 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種した際の、それぞれのワクチンに対する有効性
➡複数のワクチン接種によって効果が減少することはない。 - 複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種した際の、ワクチン接種の有害事象、副反応
➡複数のワクチン接種によって有害事象、副反応の頻度が上がることはない。 - 同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数
➡本数に原則制限はなく、同時にいくつもの接種をしても問題はない。
乳幼児期に必要なワクチンは多い
乳幼児期に受けるべき重要なワクチンは、
- BCG
- 四種混合
- MR
- ヒブ
- 肺炎球菌
など他にも数多くあり、それぞれのワクチンにおける接種回数も複数回に及びます。そのため、赤ちゃんの体調の良い時を狙って1回1種類ずつ単独で接種していくのは時間がかかるだけでなく、何より赤ちゃんの負担にもなってしまいます。
ワクチン接種率の低下
日本では従来、1回に1種類のワクチン接種という厚生労働省の「予防接種実施要領」があり、医師は特別な事情がない限り、同時接種を控えるといった傾向がありました。
しかし近年、
- ワクチンの種類が増えてきたこと
- 共働き世帯の増加や、こどもの習いごと・塾通いの増加など、ライフスタイルが変化したこと
によって、複数のワクチンを単独で接種するための時間を作れず、接種率が低下するという問題が生じています。こうした親の負担を軽減するためにも、同時接種を推進する動きが高まっています。
そんな矢先、2011年2月、小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンなどを同時接種した乳幼児の死亡例が7件報告され、同時接種に対してさらに不安を感じられた方も多いと思います。しかし、その後の詳しい調査の結果、ワクチンの品質に問題はなく、同時接種と死亡の明確な因果関係は認められませんでした。死亡した7名の患者のうち3名には心臓病などの基礎疾患があり、また他の患者についても、乳幼児突然死症候群や感染症が死因である可能性があることがわかりました。
つまり、基本的には同時接種したからといって、単独接種でも起こる可能性のある副反応のリスクが高まるわけではないということです。
さいごに
キャップスクリニックでは、ワクチンの同時接種は、お子さんの基礎疾患や接種時の体調などを見た上で総合的に判断しています。どうしてもご心配な場合は、一回ずつの接種も対応致しますので、クリニックのスタッフにお気軽にご相談ください。
ワクチンによって命にかかわる重篤な疾患が予防できます。そして、ワクチンによって多くの命が救えます。予防接種は適切な時期に受けることがとても重要です。ワクチンの大切さをよくご理解いただき、お子さんが重篤な疾患にかかるのを予防しましょう。